S&OP(Sales and Operating Planning)とは

「継続的に収益を上げ続けるために、組織横断で、トップマネジメントとミドルマネジメントが参加して、製造と販売の意思決定を行う」

ことです。

S&OPは古くからある概念ですが、最近、SCMの見直しとともに、再び脚光を浴びてきています。

今回は、S&OPについて見ていきたいと思います。

S&OPと需給調整会議のちがい

S&OPとよく混同されるのが「需給調整会議」です。

需給調整会議とは、製造部門と販売部門が、売る量と作る量を合意する場のことを指しています。

日本の家電メーカー、ハイテクメーカーでは、「PSI会議」と呼んでいるかもしれません。

私は、S&OPの説明をする機会が多いのですが、その時、必ずといっていいほど、顧客から次のようなことを言われます。

「私たちは、需給調整会議で、S&OPと似たようなことをやっている。これでうまくいってるのだから、S&OPは必要ない!」

たしかに、S&OPと従来の需給調整会議は似ているところもあります。

しかし、致命的に異なる点がいくつかありますので、今回はそれを紹介していきたいと思います。

1)数量視点と金額視点のちがい

従来の需給調整会議では、製造部門と販売部門が、売る量作る量を調整していました。

しかし、これは、数量ベースで議論されているケースが殆どです。

「XXケース販売するから、XXケース用意してほしい。」
「XX個作るので、XX個売り切ってほしい。」

すべて、数量視点での話です。

S&OPで重要なのは、経営視点の導入です。

売上や利益の数字はすべて金額ベースです。

数量ベースで会話することも重要ですが、それが、金額ベースで見える化されていないと意味がないのです。

SCMと経営をつなぐための要件に他なりません。

すべての品目単位で日別や週別に利益を出す必要はありません。

しかし、月別、ブランド別、カテゴリー別といった、ざっくりとした単位では、利益を可視化し、経営目標に沿った需給調整をすることが重要なのです。

このためには、おばけのようなエクセルで管理しているPSI在庫管理表を、少しバージョンアップさせ、金額視点でも議論できるように、システムやプラットフォームも改良する必要がでてくることでしょう。

2)経営部門およびトップマネジメントの参画

私の経験上、販売部門はSCMのプロジェクトへの参画意識は低いケースが多いです。

その理由は、営業は販売目標を達成することが第一であり、在庫を減らすことや、会社のキャッシュフローを増加させることに興味はないためです。

自分たちのノルマ達成が、絶対的な評価指標となっているため、これは当然のことではないかと思います。

このため、営業は販売計画に基づき、できるだけ、たくさんの在庫を確保しようとし、製造部門に対して多めの要求を出します。

製造部門では、一気に注文がくると設備が破綻するため、できる限り、きっちりと平準化生産をしたいと考えています。

このため、販売部門が多めに用意してくれと言っても、それが本当に必要なのか、売り切れるのか、懐疑的になっていることが多いです。

ようは、販売部門は「売りたい量」を議論しているつもりのに、製造部門は「売れる見込みの量」を議論したいために、ずっと噛み合わない状況が続くのです。

S&OPでは、この2者に、審判をはさみむことを考えます。

経営企画部門(もしくは社長直轄の組織)の登場です。

経営企画部門は、中長期計画をベースに議論を進めます。

このため、販売部門が売りたい量や、製造部門が作りたい量だけでなく、経営としての判断、つまり利益のでるような意見を絡めてきます。

この場合、金額ベースで会話することになりますので、ここが、需給調整会議と根本的に異なってるのです。

3)ギャップ分析

従来の需給調整会議では、重要な品目や新商品の売り方などを議論していました。

S&OPでは、それに加えて、ギャップ分析というのを行います。

これは、経営部門や販売部門がもっている、経営目標、販売目標、つまり売りたい数字と、製造部門がもっている作れる数字、それに、客観的な視点での売れる見込みの数字を照らし合わせて、なぜ売れないのか、目標と実態とのギャップは何なのか、原因と施策・アクションを検討していくことを指しています。

つまり、売りたい量と売れる量を可視化し、それを金額ベースで議論を進めます。

そして、経営視点で、アクセルを踏むのか、ブレーキを踏むのか、意思決定していくのです。

S&OPを成功させるためのポイント

S&OPのポイントは、なんといっても、トップマネジメントとミドルマネジメントが参加することに尽きます。

S&OPは、物の流れと収益を関連させて、実績・計画情報を共有し、今後、自社がどのような販売状況や業務・操業度、収益になるのかを確認することが目的なのです。

私の経験上、

・S&OPのような経営視点の会議は月に1回
・需給調整会議のような数量ベースの調整は週に1回

くらいのペースで実施するのが、落としどころなのではないかと思っています。

最初の頃は、S&OPは2ヶ月に1回でもいいかもしれません。

しかし、確実に経営視点を入れて、変化に対応していくことが重要なのだと思います。

あと、S&OPを支えるプラットフォーム(IT)も重要になってきます。

金額視点で議論をできるようにPSI表を改良することや、目標と実態のギャップを可視化する機能などが、必要になってきます。

これには、大規模なパッケージを導入しなくても、今あるシステムを少し改良するだけでよいケースも多々ありました。

S&OPによって、モノの流れとカネのコントロールレバーを手に入れることができるようになります。

S&OPはマネジメントが関わることが重要なのです。

複雑で変化が早い現在のビジネス環境では、意思決定が後手になると取り返しがつかないことになります。

S&OPを使って、モノとカネのコントロールを確実に実行できるようにすることが、経営の重要成功要因となってくるでしょう。