コンサルティングを始めたばかりの頃、私は次のような文章を報告書に書きました。

「本報告のポイントは主に3つあります。それは…。」

この点について、私は上司から3時間ほど説教をうけたのです。

私には、何をやらかしたのか、全く意味の分からない状況でした。

ECRSフレームワーク

業務改革を進めていく上での方法論として、「ECRS」というフレームワークがあります。

これは、

E:Eliminate(排除:なくせないか)
C:Combine(統合:いっしょにできないか)
R:Rearrange(交換と順序替え:順番をかえれないか)
S:Simplify(単純化:簡単にできないか)

の4つの概念の頭文字をとったものになります。

業務の改善において、このECRSを適用すると、改善の効果が大きく、過剰や過小な改善も避けられると言われています。

さらに、不要なトラブルも最小になることが知られています。

業務を改善していく場合、まず、「E(なくせないか)」を考えていきます。

例として、無駄な会議や報告をなくしていくことが挙げられます。

コストもかけずに簡単にできるので、効果もそこそこあります。

「E」の検討が終わった後は「C(いっしょにできないか)」を考えることになります。

類似の業務を結合・集中化することで、工数や設備の削減効果を狙うのです。

これもさほどコストをかけずに実施可能です。

「E」と「C」が終わった後に検討するのが「R(順番をかえれないか)」です。

作業順序や作業場所、人員をうまく入れ替えることで、部分的に業務の再設計を行うことができます。

入れ替え作業的な意味合いが強いため、あくまで部分最適な小さな改善にとどまることが多いです。

最後に登場するのが、「S(簡単にできないか)」です。

業務の実態を分析した上で、あるべき姿を設計し、それに向かって改革を進めることになります。

システムを入れて作業を効率化したり、複雑な業務をアウトソーシングしたりすることなどです。

「単純化」するということ

ECRSの4つの視点のうち、4番目の「S(単純化)」について、もう少し見ていきたいと思います。

・議事録を、A4用紙1枚に限定する
・報告書を、テンプレート化する
・稟議フローを、短縮化する

会社で仕事をしていれば、「単純化」の例は、いくらでも思いつきます。

「単純化」は、周囲から喜ばれることが多いです。

現状が複雑だからです。

では、なぜ現状が複雑になってしまうのか。

さまざまな事情があると思いますが、私の経験上、未熟な人に限って、物事を複雑に考えている点が多いように感じます。

・勉強を始めたばかりの人が、参考書を買いまくる
・家電製品に、一部の人しか使わない機能をたくさん盛り込んで、普通の人が使いこなせない
・知識が豊富なため、あれこれと話し込んでしまい、結果としてスピーチ時間をオーバーする

どれも、よくある話です。

人間、複雑なことを複雑に伝えるのは簡単です。

そのまま伝えればいいからです。

しかし、複雑なことを簡単に伝えることには高いスキルを要します。

ここが重要なのです。

冒頭の話に戻りましょう。

私はなぜ怒られたのでしょうか。

私は当時のプロジェクトであれこれ体験をしていました。

経営視点での課題も、現場の課題も、制約条件もいろいろ知り尽くしていました。

報告書にもそれらについて、盛りだくさん記述しました。

ただ、限られた時間の中、それを全部報告することは不可能でした。

とりあえず、私は特に言いたいことを3点にまとめ上げました。

ただ、それ以外にも言いたいことは多々ありました。それが冒頭の表現につながっていたのです。

「本報告のポイントは主に3つあります。それは…。」

私は、伝えることは3点だけでした。

しかし、それは氷山の一角であり、他にもたくさんありますよ(私は把握していますよ)ということを、「主に」という言葉に、無意識のうちに込めていたのです。

中途半端に複雑なことをいろいろ把握していたので、いろいろ伝えたかったのでしょう。

未熟でした。

本当に優秀なコンサルタントなら、

「本報告のポイントは3つあります。それは…。」

と言い切ってしまうことでしょう。

複雑な話を、単純化しているのです。

それ以外のことはここで論点とはしないのです。

私のように「主に」をつけてしまうと、ポイントを3つに選ぶときに、十分絞りきれていないように思われ、3つ以外のポイントは何なのか、勘ぐられることになりかねないのです。

せっかく整理して、3つのポイントにようやくしたのであれば、自信をもってそのように言い切るべきだったのです。

細かい話のようですが、これはコンサルタント業だけでなく、日常生活でもよくあることかと思います。

話を単純化するということは、伝えたいことがクリアになっている、つまり明確化されている状況を意味します。

我々は常に、相手へのメッセージ性を考えて、コミュニケーションをとっていく必要があるのではないでしょうか。