私は、需要予測に関するプロジェクトを20年近く見てきました。

当たり前のことですが、20年前と、最近とでは、状況やニーズは大きく異なっています。

今回は、私の経験をもとに、需要予測の最近の特徴を3点ほど紹介していきたいと思います。

KKD(経験・勘・度胸)

需要予測の最も簡単な方法は「人的予測」です。

これは、統計などの数学モデルを使わずに、人間が予測する方法です。

そもそも実務の世界では、サンプルとなる実績が少なすぎて、統計予測は不十分ですし、人間は、KKD(勘と経験と度胸)によっても、そうおかしな予測はしないものです。

意外にも、この原始的な方法をとっている会社は多いのです。

私は、多くの企業で、需要予測の業務設計にあたってきましたが、人間の予測でも精度はそれほど悪くはないケースが多かったです。

予測精度でいうと、どの品目でも、ほぼ±30%くらいには入っているケースが多いです。

頭の中で「そういえば、あのとき、こういうことがあったから、この実績は異常値だ。」と判断して経験的にノイズを除き、予測することが可能となります。

たしかに、経験値に依存する面はあります。

しかし、過去に何があったかを覚えていて、どれほどの影響があったのかを、鉛筆をなめることで算出することができれば、それはそれでいい予測ができあがるのです。

もちろん、人的予測には欠点もあります。

第一に、予測の精度が経験値に左右される点が挙げられます。

ベテランと新人の差は結構大きく、人が変わると予測精度がバラつくリスクがあります。

第二に、予測業務が標準化していないので、予測のロジックを第三者が検証できず、かつ、手法が引き継げない問題があります。

結果として、予測担当者を責めることはできても、組織的に業務支援できない上に、業務知識も伝達されにくくなります。

また、品目数が多すぎると、きめ細かい予測が困難になり、予測がいい加減になっていくリスクもあります。

仕事の繁閑で精度が変わってしまい、品質が一定にならないのです。

こうした欠点も、結局、人的に対応して改善していかなければなりません。

予測精度を測定し、常に精度をあげることを意識させて、品質を維持する努力をしていく必要があるのです。

また、予測と実績をできる限り「見える化」し、人的予測をサポートすることも重要です。

過去の精度がどれほどで、予測が外れた時に何があったのかをトレースできるようにする必要があります。

あまりに個人技に頼らず、組織として支援できるところは可能な限り、支援するべきだと考えています。

プロモーションフラグの活用

2000年頃は、需要予測システムを導入し、営業の情報は販売情報として、需要予測値に味付けをすることが少なくありませんでした。

ところが、営業が味付けをすると、欠品を恐れるあまり、多めの数字となり、在庫過剰となってしまうことが多発しました。

そこで、営業が数字をそのまま入力するのではなく、プロモーション情報としてフラグ化し、需要予測のモデルに組み込まれる機能が、2010年頃にはいってから多用されるようになってきています。

・「値引き」はフラグ1
・「キャンペーン」はフラグ2
・「セット販売」はフラグ3

など、プロモーションフラグを何種類か定義し、過去の販売実績、および未来の期間に設定します。

すると、システムは過去の販売実績の平均とプロモーションフラグを立てた期間の実績の増分を読み取り、プロモーション増分を反映させた予測値を出力するのです。

営業はフラグしか設定できないため、在庫余剰を起こしにくくなります。

どうしても販売量が見えているものについては、週次会議等で、個別に調整すればよいのです。

合理性の高い、現代風の進め方ですが、日本の小売業、卸売業ではプロモーション(販促活動)が複雑かつ重複が多くなっています。

このため、現場でオペレーションが浸透している会社は数少ないのではないかと考えられます。

人工知能の活用

人工知能とは、人工的にコンピュータ上で人間と同様の知能を実現しようとする試み、またはその技術の総称のことを指します。

ビッグデータの進展などとともに、機械学習やディープラーニングといった技術が注目されてきています。

ここでは、需要予測にどのように人工知能が活用されていくのか考えてみましょう。

従来は、販売実績や出荷実績、顧客の情報をインプットとして先の見通しを立て、それを事業戦略やオペレーションに活用してきました。

そして、これらは基本的に、縦の情報の流れであり、横に情報が流れることは少ないといえます。

ところが、ビッグデータの時代になり、グーグルやアマゾンが、検索の領域で強い力を持つようになりました。

これは情報を横に束ねていることに相当します。

それによって、ある領域における検索のパターン、広告の出し方、商品の販売の仕方を他の領域に適用することができるのです。

こうした領域をまたいで、良い知見を他の領域に活用することを「知識の転移」と呼びます。

顧客ごとの「知識の転移」が可能になると何が起こるのでしょうか?

顧客の「認識精度」があがります。

つまり、顧客の行動の中で、本質的に重要なもの(特徴量)が獲得され、より顧客のほしいものが適切に届けられるようになります。

さらに「顧客が何が欲しいのか?」が分かるようになり、新商品の開発にもサービスの提供にも活かされるようになります。

顧客の変化や社会環境の変化に対しての対応力が、極めて早くなります。

こうなってくると、需要予測というよりも、むしろ「需要創造」の世界です。

こうなってくると、需要予測を中心とした業務プロセスは抜本的に考え方を変えないといけないのかもしれません。

時代とともに変化する需要予測ニーズ

私は、天気予報のニーズが、この世からなくなることがないのと同じように、多かれ少なかれ、需要予測のニーズがなくなることはないと考えています。

ただし、20年前と現在では、ニーズの中身が異なってきているのも事実です。

20年前は、

・属人化した需要予測業務を標準化したい
・サプライチェーンマネジメントシステムを導入したい

という思想のもと、需要予測を整備することが多かったように感じますが、最近は、

・人工知能を中心とした最新のモデルを試したい
・難解ではなく、説明しやすいシンプルなモデルに変えたい
・数量予測だけでなく、金額のインパクトも予測に含めたい
・期中の変化にも対応できるようなモデルを作りたい
・インパクトの大きい上市前の新商品の見込みをうまく作りたい

というニーズが多いように感じます。

いずれにしても、唯一の答えがあるわけではありません。

多少の改善は見込めても、全自動でうまくいくことは永遠にないでしょう。

需要予測は奥が深いです。

先の状況を見通すということは、ドラえもんの世界のタイムマシンがないと出来ないことです。

これをいかに、現代のノウハウでやってのけるのか。

それは、各企業のトップマネジメント、ボトム業務の意識改革、それから、研究関連者や、我々のような外部専門家のがんばりにかかっていると思われます。