私は、SCM(サプライチェーンマネジメント)に関するコンサルタントをしています。

そして、クライアントと打ち合わせでは、最近、「デカップリングポイント」という言葉が頻繁にでてきます。

しかし、この言葉は、あまり一般的に知られていないように見えます。

デカップリングポイントは、サプライチェーンマネジメントの設計をするときに、避けては通れない概念です。

そこで、今回は、このデカップリングポイントについて、簡単に紹介していきたいと思います。

プッシュ型とプル型

SCMには、プッシュ型プル型という2つの概念があります。

プッシュ型とは、文字通り「押し出す」という意味で、ニーズにかかわらず、とにかくモノを生産して押し出す(売り切る)というものです。

昔、景気がよかった頃は「作れば売れる」という時代でした。

大量にモノを作りさえすれば、売上は向上していきました。

プッシュ型ビジネスの全盛期でした。

一方、プル型は、プッシュ型の逆の意味で、顧客のニーズに基づいて生産数を決める形態です。

SCMの基本思想である

「必要なモノを、必要なときに、必要なだけ、供給する」

といった考え方は、このプル型を意識したものになっています。

製品のライフサイクルが非常に短いハイテク商品などは、作った分だけ売り切って終わりという商品が多いです。

このため、プッシュ型の形態をとることが多いです。

しかし、SCMを設計する際には、顧客のニーズを出発点として、プル型のビジネスモデルを設計していくことが多くなります。

デカップリングポイントとは?

では、プル型のビジネスはどのように考えていけばいいのでしょうか?

例えば、ジュースなどの飲み物を考えてみましょう。

ジュースが3本ほしいお客さんがお店にやってきたとします。

「ジュース3本ください」

お店の人が聞いてから、ジュースを3本分、原材料から作り始めていたのでは、お客さんは怒って立ち去ってしまいます。

消費者の感覚では、ジュースはお店の棚に並んでいるものです。

お客さんの声(ニーズ)を聞いてから、モノを作り出すのが、完全プル型のビジネスモデルになります。

しかし、現実的には、お店でジュースを原材料から作ることはできません。

そこで、生産者側は、ある程度、プッシュ型でジュースを事前に生産して在庫を用意しておくのです。

ただ、完全にプッシュ型にしてしまうと、在庫が膨らんでしまうので、ここに、少しだけプル型の考えを入れておきます。

生産者である企業は、まず、お店や自動販売機で、どのジュースが何本くらい売れるかを事前に予想します。

その予想をもとに、何本つくるかを決めていくのです。

この予想を、需要予測販売計画と呼んでいます。

プッシュ型の形態をとっていますが、需要を読むことで、プル型の考えも取り入れているのです。

つまり、ある在庫拠点までは、プッシュ型で在庫を配置しておきます。

その後、プル型で需要のニーズに合うように、在庫を引き当て、出荷・販売していく流れになります。

このプッシュ型とプル型の分岐点となる在庫拠点や倉庫のことをデカップリングポイントと呼んでいます。

デカップリングポイントまでは、計画主導で在庫を構えておき(プッシュ型)、顧客に近い小売側では、実際の需要で在庫を引き当てて出荷(プル型)していくのです。

言い方を変えれば、デカップリングポイントは、見込生産(生産者が需要予測に基づいてプッシュ生産すること)と、受注生産(実需に基づいて在庫を引き当てて出荷すること)の分岐点とも言えるでしょう。

デカップリングポイントが、消費者側に近づけば近づくほど、在庫を抱えるリスクが高まり、キャッシュフローが悪化します。

逆に、デカップリングポイントが、生産者側に近づけば近づくほど、欠品に伴う販売機会ロスのリスクが高まっていきます。

このデカップリングポイントを含めたビジネスを、きちんと設計することが、SCM成功のための肝となっているのは、間違いないでしょう。